【あらすじ】
小さかった頃見上げた空に、
いちばん近くにいるのが、自分だと思っていた。
これがあれば、どこへも行けると。
誰よりも先に、彼方へ行けると。
そう、信じていた――――
空を飛ぶことが、自転車に乗るぐらい簡単にできる世界。
そこで流行しているスポーツ『フライングサーカス』。
かつて、そのスポーツで将来を期待されていた主人公は、
圧倒的な敗北による挫折と、ある理由からそこを離れていた。
だが、転校生である倉科明日香と出会い、
空の飛び方を教えるうちに昔の熱が戻ってくる。
立場が変わっての『フライングサーカス』への出場。
明日香の手を握った主人公は、今度はどこまで高く飛べるのか。
“空を飛ぶ”ことを巡って出会ったふたりと、
その仲間たちが贈る青春恋愛物語。
【シナリオ】
まずこの作品を購入した大半の人の理由は仮想スポーツである『フライングサーカス』、通称FCに魅かれたからであろう。
現実ではありえない、空の競技であるFCがどんなスポーツなのか、どんな展開になるのか気になったはず。
仮想スポーツを題材としながらも、読み手には解りやすい表現や解説が含まれており、見事にこの作品の世界観に溶け込めるテキストでした。
一般のシュミレーションゲームもそうだが、エロゲはテキストを読むのが主である。
そのため、
文章だけでいかに感情移入できるか、世界観を楽しめるかが重要になってくる。
最後にとんでもない結末を用意していたとしても、文章に面白みがなければ楽しさも半減。
逆もまた叱りで、結末がある程度予想できたとしても、文章が面白ければ一定のモチベを保って最後までプレイできる。
この作品は割りと後者の方で、ある程度の展開は読めていたが、何よりFCの面白さを文章で伝えられるテキスト及びシナリオになっていた。
またこの作品は最近のエロゲと違って、スポ根漫画のような熱い展開が多々繰り広げられているため、展開がやや王道パターン気味なのは致し方ないと思う(特に明日香√と莉佳√
ちなみに各キャラのEDとグランド√終了後も複線をあえてはっきりと回収していない。
ユーザーに『やっぱりこれはああいうことなのかな』と考えさせる終わり方をしている(例えるならDBGTの最終回
ここら辺の終わり方が好きな人もいるだろうが、個人的には全て回収して欲しかった。
アニメやら漫画なら様々なコンテンツで拡大できるだろうが、エロゲなんざせいぜいアニメ化が限界だろう。
発売前からアニメ化というかなり強気な発売でしたが、アニメでの複線回収の可能性はかなり低いのではないだろうか。
しかしその点を差し引いても、プレイ終了後は良かったと思えるよう、わりと綺麗にまとめられていたのでここら辺はライターさんの力が大きかった。
【キャラ】
倉科 明日香(くらしな あすか)
主人公の住んでいる島へやって来た転校生。
空を飛ぶことに魅了されてFCを始める。
明るくて前向きでFCの才能ありのまさに正ヒロインの典型方ですね。
飛行スタイルはオールラウンダーで、試合を重ねるごとに強くなるタイプ。
こういったキャラはシナリオでどんなご都合主義でも受け入れられる仕様になっているため、後半は王道でしたね。
べ○ータ「俺ら戦闘民族は死線をくぐるほど強くなる・・・」でも可愛いから許しちゃう(何
鳶沢 みさき(とびさわ みさき)
クラスメイトで大食漢で何でもそつなくこなす天才肌。
飛行スタイルはファイター。
シナリオはこのみさき√が一番面白かった。
才能ありの明日香と違って、天才肌のみさきは直感でプレイしているため、FC脳、いわゆる戦略部分が弱い。
徐々に才能を開花させていく明日香に嫉妬してしまい、部活を辞めてしまう。
過去の自分と姿が重なって見えた主人公はみさきを大会で優勝させようとサポートしていく展開。
人間の負である感情、天才であるが故の悩みがこのシナリオでは丁寧に描かれていた。
普段なぁなぁで練習していたみさきが、自分のために協力してくれる主人公や友人達と一緒に努力していく姿は良かった。
主人公を茶化す掛け合いは見ていて面白かったかな。
有坂 真白(ありさか ましろ)
みさき大好きな後輩でゲーマー。
飛行スタイルはスピーダーで部内で一番弱い。
作品内で唯一の貧乳キャラ。
上記二人に比べると熱い展開はあまりなく、百合気味な真白が先輩大好きになる過程に萌えられるシナリオ。
しかしこの作品でけっこうグッときた場面があってそこはお気に入りかな。
勉強やら色んなことが苦手だった真白。
そんな真白でもFCに興味を持ってやり始めるが、部内で一番弱く、練習試合でも全く勝てない。
一生懸命に主人公と特訓をする中で、初めて何かに打ちこめられたこと、努力して進歩している自分を感じて
『負けても笑ってピースできるかもしれません』と笑顔で話す。
そして大会当日、真白の対戦を見られなかった主人公が真白の元へ戻ると、真白が
笑顔で『ぶいっ!』とピース。
真白が勝ったと安堵した主人公だったが、実は真白の結果は
初戦敗退。
皆に隠れて一人で泣いている真白。
やばい、ちょっと感動した。
次の大会前の練習試合でも全て敗北してしまい、泣き崩れる。
そんな真白を奮い立たせるために奮闘する主人公が格好良かった。
市ノ瀬 莉佳(いちのせ りか)
主人公宅の隣に引っ越してきた別の学園のFC選手。
真面目で一生懸命。
飛行スタイルはスピーダー。
見た目は可愛いが、燃えでも萌えでもない中途半端なシナリオだったせいで、あまり記憶に残ってない。
後半にこの娘の幼馴染が登場するんですが、ラフプレイを得意とする選手に堕ちてしまっている。
そんな幼馴染にFCの楽しさを教えて救い出そうとするのが、大まかなシナリオ。
後は他校のライバル達が個性豊かで面白かった
飛行スタイルがそれぞれ違っていて、試合内容はだれることなく読み続けられた。
【システム】
バックログでシーンスキップできるのはかなり便利で嬉しい。
ただCG鑑賞の際に左クリックでCG差分を見れないのが地味に痛い。
今までのエロゲだったら左で差分、右で戻るなのに、これは全て戻るで見づらいことこの上ない。
あとはシーン鑑賞があるのに音楽鑑賞がないこと。
これだけ素晴らしいOP、挿入歌、ED、BGMを取り揃えているのに、鑑賞できないのは非常に残念。
またシーン鑑賞も鳥肌が立つほどのクオリティであるOPムービーと次回予告が見れず、Hシーンのみという仕様。
そこはぜひ次回作で改善して欲しい。
【グラフィック】
空を舞台としているだけあって、見下ろした際の海や町の景色にかなり気合が入っていたように感じる。
特に『空を飛んでいる状態』の視点を大事にしており、クオリティは高い。
また試合時のCGのグラは普通なのだが、とにかくCGの数が多いため、試合の描写もかなり細かく再現できている。
しかし試合で用いられたCGも鑑賞はできないため、試合前のセーブは必須となってしまう。
これだけ手が込んでいるのに、本当にもったいない。
【音楽】
主題歌は川田まみさんの『Wings of Courage -空を超えて-』でかなりお気に入り。発売前から何百回とリピートしてます。
各キャラのED曲も悪くない。個人的にはみさきと莉佳のEDが好き。
挿入歌のKOTOKOさんの曲も好きだけど、やっぱり個人的には主題歌が好きです。
BGMも作風に合っていて違和感はなし。
シーンに合わせた主題歌と挿入歌の入り方が素晴らしい。
【Hシーン】
一人につき2回。
わりとスポ根系のエロゲなのでそんなにエロくはなく抑え目な印象。
【総評】
空を舞台とした仮想スポーツを解りやすくも細かく表現できており、その世界観に魅力を感じられるのは間違いないかと。
またスポーツを題材としているため、√によっては多少ご都合主義な面もあるが、熱い展開に楽しめる作品でした。
総評8/シナリオ8/キャラ7/システム3/グラフィック9/音楽9/H4